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本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

2018-19 近現代の芸術史Ⅰ〜欧米のモダニズムとその後の運動

林洋子 編『近現代の芸術史Ⅰ〜欧米のモダニズムとその後の運動』読了

 知識は系統的に学ばなければならない。それが師匠の基本的な教えだった。何かを系統的に学ぶということ。まずは、そのことについての歴史を学ぶということだろう。科学なら科学史、哲学なら哲学史という具合に。

 私は芸術について学びたい。これまにも美術史関連の入門書をいくつか読んできた。本書は、美術史の中でも、特に近現代の美術について取り上げたもの。現代美術については興味はある。でもなにやら難しそうだ。でも、知りたい。そんなわけで、本書を手に取った。

 何でこんなのが芸術なんだろう。頭に「?」しか浮かばないような経験を、美術館ですることがある。20世紀以降の作品にそういうものが多い気がする。「自分の感性が追いついていない」「自分の感性にはあわない」といって、納得してしまいがちだった。

 本書には、20世紀からはじまる藝術の動向がまとめられている。フォービスム、表現主義キュビスム抽象絵画など、20世紀初頭は、藝術の諸要素の中から、例えば形なら形、色なら色と言った一要素を取り出して追求する動きが起こった。さらに、ダダ、シュルレアリスムなど、「藝術とは何か」という命題に真っ向から挑んだ、謂わば哲学としての藝術も起こった。

 そのような根本への問を皮切りに、コンセプチュアル・アートミニマリズムなどなど、多様な芸術動向が誕生した。

 また、20世紀は戦争や革命の世紀と評される。藝術も人間の営みである以上、そうした人間社会の動向と無縁ではありえない。時代の空気、時代というものの影響。そんな視点から、近現代の藝術の流れを見つめる構成にもなっている。

 ときに激しく過去の藝術を否定する。ときに過去の藝術に回帰する。そのように行きつ戻りつしながら、藝術の歴史は綴られてきた。そしてそのダイナミズムは、時代が下るほどに加速していく。これが読み終えてのいちばん大きな印象だ。

 そして、この印象は、決して藝術という分野に限った話ではないだろう、とも思う。あらゆる人類の歴史がこのようなパターンで綴られてきたのだろう。そんな歴史の普遍性をも思った。

 今まで馴染みがないから、「?」で終わることが多く、いまいち興味が持てずにいた現代美術の印象が、大きく変わった。こんなに面白かったのか!!そう思えたことが、今回の読書体験の、最大の収穫だ。

 本書は「芸術教養シリーズ」の第7巻にあたる。このシリーズは、「芸術大学の新入生を読者として想定していると同時に、社会人にとっての教養の糧になることも念頭に置いて作成されている」とのこと。Ach!まさに、私のような人間のための一冊だ!とても勉強になったし、このシリーズの他の巻も、今後、読んでみたい。