何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

2018-26 がん 生と死の謎に挑む

立花隆 著『がん 生と死の謎に挑む』読了

先日、母が血尿を出した。病院にて膀胱がんとの診断が下った。

本書は以前、母が別のがんで手術を受ける前に、一度読んだのだが、そのとき著者が膀胱がん患者であることが記されていたことを思い出し、改めて再読することにした。

本書は大きく2部構成になっている。

前半は「がんとは何か」という問いに対する最先端(2010現在)の知見が紹介されている。がんが死に至る病である以上、「がんとは何か」という問いは、「生とは何か」あるいは「人間とは何か」という問いにまで行きつく。そして、その問いに対する著者の考えは、がん患者を家族に持つ私の心を少し穏やかにしてくれるものであった。

後半は著者自身の闘病体験を綴ったものだ。母が同じ病気ということで、後半もとても参考になった。

本書のキーセンテンスは「がんは遺伝子の病気である」というもの。そして、私たちの個性を生み出している遺伝子の病気であるだけに、がんは一人ひとり異なった個性を持っており「安易な一般化ができない病気である」ということにもなる。

今回、再読してみて、繰り返し読むことの大切さを実感した。完全に忘れてしまっている部分がたくさんあったのはいつものことだが、読み違えたまま記憶している部分も結構あった。「本は最低でも3回は読まないと読んだことにはならない」とは誰の言葉だったか失念したが、本当にそのとおりだと思った。

 

また、著者のことを批判的に取り上げる文章を眼にすることがある。私のような浅学の輩には、本当のところは知れないが、一つだけ確実なのは、著者の文章はとても読みやすいということだ。当ブログにも再三記しているが、私はどうやら頭のよいひとが好きらしい。そして、私の求める「頭のよさ」とは、「自分の考えていることを、相手に伝わるように言語化する能力」だ。そうした観点で眺めると、著者の文章は、非常に「頭のよい」文章だと感じられた。

がん 生と死の謎に挑む (文春文庫)

がん 生と死の謎に挑む (文春文庫)