8冊目 銀河英雄伝説6〜飛翔篇
本巻の主要トピック
・キュンメル事件
・地球教本部壊滅
・ヤンの不正逮捕(反和平活動違反疑い)〜ハイネセン脱出
・エル・ファシル独立宣言
新生銀河帝国の宇宙統一により、しばらくは平和が保たれるかにみえた。が、様々な思惑がはたらいて、再び戦火は燃え広がろうとしていた。「人々は戦乱に疲れていたはずであった――しかし、あるいはそれ以上に、平和になれていなかったのである。」銀河の歴史はさらに加速する。
「せっかく軍隊という牢獄から脱出しながら、結婚というべつの牢獄に志願してはいるとは、あなたも物ずきな人ですな」
「独身生活一〇年でさとりえぬことが、一週間の結婚生活でさとれるものさ。よき哲学者の誕生をきたいしよう」(シーンコップ&キャゼルヌ)
「吾々は敵の堕落を歓迎し、それどころか促進すらしなくてはならない。情けない話じゃないか。政治とか軍事とかが悪魔の管轄に属することだとよくわかるよ。で、それを見て神は楽しむんだろうな」(ヤン)
「戦争の九〇パーセントまでは、後世の人々があきれるような愚かな理由でおこった。残る一〇パーセントは、当時の人々でさえあきれるような、より愚かな理由でおこった……」(ヤン)
「ヤン提督もお気の毒に。せっかく軍隊を離れて、花嫁と年金で両手に花というはずだったのにな」
「花園は盗賊に荒らされるものだし、美しい花は独占してよいものではないさ」
「あら、ありがとうございます。でも、私は独占されたいと思っているんですけど」(アッテンボロー&シェーンコップ&フレデリカ)
「何か最後の望みはおありですか、閣下」
「そうだね、ぜひ宇宙暦八七〇年ものの白ワインを飲んでから死にたい」
たっぷり五秒ほど、大尉はヤンの言葉の意味を吟味していた。ようやく理解すると、腹をたてたような表情になる。この年はまだ七九九年なのである。
余談だが、こうして各巻ごとに、印象に残った部分の引用をしていると、同盟側の引用ばかりが目立つ。「銀英伝」を、帝国と同盟、あるいはフェザーン、どの勢力に移入して読むかは、読者の自由だろう。こうしてみると私は、思っていた以上に同盟側への思い入れが強いらしい。帝国にも魅力的な人物は多いけれど、皮肉めいたユーモアで語られるヤン一党の会話は、とても心地よい。きっと著者も、書いていて楽しかったんじゃないだろうか。シェーンコップがとくに、ピリリといい味出してます。