何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

2018-38,39 火星の人(上・下)

A.ウィアー著『火星の人』(上)(下)読了。

少し前、名作の誉れ高い某少年コミックを読んだ。全数十巻のうち、5巻まで読んでやめてしまった。どんな難局に陥っても、最終的には「気合」や「勇気」だけで乗り切ってしまう。今の私にはそれが興冷めにしか思えなかった。

現在、私のテーマは「唯物論」的に世界を見つめるまなざしを獲得することだ。ここでいう「唯物論」とは「なるべく飛躍をしない」という意味だ。

なにか不可解な現象を目の当たりにしたとき、「神の御業」といってしまえばすべて説明できてしまう。なぜなら神は万能だから。なるべく神サマを持ち出さず、人知の及ぶ限り、というか人知の及ぶ範囲を広げるために、思考を飛躍させずに世界をみつめたい。「神」や「奇跡」、「愛」などは便利な言葉だ。飛躍を容易にする。「気合」や「勇気」も便利な言葉だ。でもこうした言葉だけでは現実の世界は説明できない。

本書はめちゃくちゃ面白かった。当然、フィクションであるし「飛躍」はあるのだろう。もしマーク・ワトニーとおなじ境地に立たされたとき、本書と同じことをして助かるはずもない。しかし、徹底的に「飛躍」を抑制した物語は、今の私には読んでいて快感しかなかった。

本書は映画『オデッセイ』の原作であることは言うまでもないが、原作と映画、どちらか一方しか摂取できないとなれば、原作をおすすめしたい。ただ、私は映画をみたあとで原作を読んだのだが、SF初心者の私には文章をイメージするのに映画が大きな助けになったのも事実だ。余裕があれば両方見ても損はしないと思う。

著者の新作も上梓されたらしいし、いつか読んでみたいと思う。 

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

 
火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)