ボヘミアン・ラプソディ
映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観た。というか、たった今観終わって帰ってきたところだ。
一年くらい前になるだろうか。YouTubeでQueenの動画を観ていたら、『ボヘミアン・ラプソディ』のトレーラーが流れてきた。少し興味が湧いたがどうせ私の住む片田舎の映画館には来ないだろうと思っていた。しかし、奇跡的に来ることがわかったので、これは観ておかなくてはならない、といってきた次第だ。
Queen。あまりにも有名だから、当然その存在は中学生くらいから知っていた。大学のころ、友達の家でPV集を観せてもらったことがあったが、その時はそこまでピンと来なかった。その後、車のCMで「Killer Queen」が使われているのを耳にしたとき、「何だ、ただの天才だったのか」と、はじめてこのバンドのマジックにかかった。
とはいえ、私はQueenの熱烈なファンというわけでもない。私にマジックをかけたバンドやミュージシャンはたくさんいて、Queenもその中の大切な1つというに過ぎない。
例え大好きなバンドであっても、私はそこまでバンドのパーソナルな部分に興味はない。Queenについても、フレディがバイセクシャルで、エイズで亡くなった、ブライアン・メイは手作りのギターを使っていた、くらいの知識しかなかった。映画は当然バンドのパーソナルな部分が主になる。何も知らない私にとっては興味深い点も多くあった。フレディは、バイセクシャルではなく、ホモセクシャルだったらしい。そして、勝手な印象としてフレディはバンドの調整役だったんだろうと思っていたが、映画ではフレディこそがバンドをボロボロにした人物かのように描かれていた。それが事実かどうかはわからないが、フレディの存在がバンドの個性にとって小さくなかっただろうことを考えると、それはある程度当然のことだった気もする。
あるバンドが売れると、そのバンドに(露骨に)影響を受けたバンドがたくさん現れる。それは当然の流れだろうと思う。でも、Queenの後にも先にも、(露骨に)Queenっぽいバンドはいないように、私には思われる。私はQueenの全盛期を知っているわけではないので、当時はQueenのフォロワーもたくさんいたのかもしれないが、少なくとも私の辞書の中にはQueenに似たバンドはQueen以外にない。でも、それは実は驚くほど稀有なことでもある。
「不世出の」。よく使われる賛美の言葉だが、Queenほどこの形容詞が似合うバンドを私は知らない。
難しいだろうとは思いながら、この映画の中で、なぜQueenは不世出のバンドになり得たのか、その秘密が描かれていたらいいな、という期待もすこしだけ抱いて映画館に行ったが、やはりそこは映画というより評論の領域なのだろう、Queenはやはりただの天才たちとして描かれていた。
映画の方は、まあ、星3つくらい。フレディにとっての「家族」の映画だったともいえる本作だが、ジム・ハットンがなぜそこまでフィレディの中で大きな存在だったのかはよく描かれていなかったように思う。実父との和解もちょっと唐突な気がした。でも、時間的制約の中で一つのバンドの浮き沈みを描かなければならないのだから、(ドキュメンタリーではなく)バンド映画というジャンルにおいては、星3でも十分評価に値する出来栄えだろうと思う。
しかし、それは物語としての映画についてであって、ここに音楽を加味すれば星5だった。劇場の爆音で観るQueenのライブは(当然役者が演じているのだが、曲はオリジナル音源と思われる)それだけでイチオクテンだ。
「やはり音楽はいい!」その信念を補強してくれる映画だった。もっと言えば、「音楽は世界を救う」ということをあらゆる意味で信じさせてくれる映画だったと思う。
個人的には「The Show Must Go On」がどこで流れるか期待してみていたが、エンドロールの最後の最後だったことに少し驚いたことも付記しておこう。