何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

2018-17 正しい保健体育

みうらじゅん 著『正しい保健体育』読了

 読むのは今回で4度目くらいだろうか。

 私は本書を、数少ない「本物の名著」だと思っている。なぜ、本書は「本物の名著」なのか。それは、本書には、「本当のこと」が記されているからだ。

 「本当のこと」は、しばしば耳に痛い。「本当のこと」は、しばしば都合が悪い。だから誰もが巧妙に、「本当のこと」を隠している。例えば知人の個展に招かれたとしよう。正直に感想を言えるだろうか。最初は隠しているんだけど、それがあまりに上手になりすぎるから、「本当のこと」を見つめる瞳自体が、次第に曇ってきてしまう。「本当のこと」がだんだん見えなくなってしまう。

 人によっては、本書をふざけた一冊だと思うだろう。下ネタが満載で、それだけで嫌厭するひとも多いかもしれない。本書の冒頭部分を引用してみよう。

 もともと男子は、金玉に支配されるようにできています。

 金玉というのが本体で、その着ぐるみの中に全部入っているのが、人間の男なのです。

 本書は全編こんな感じの「悪ふざけ」や「下ネタ」でできている。でも、外身に騙されてはいけない。その奥には「本当のこと」が記されている。「本当のこと」って「大切なこと」のはずだ。「大切なこと」をないがしろにしていいはずはない。上記引用のあとにはこんな文章が続く。

 いつのまにか進化した人間は、その「金玉の着ぐるみ」からはみ出した部分が大きくなってしまいました。しかし、はみ出したとはいえ、その大本にあるのが金玉であることにはかわりありません。

 ですので、そのはみ出した部分を「義務教育」でうめて、金玉に支配されないようにしているのです、義務教育とは「支配からの卒業」なのです。

  これって「本当のこと」だと思いませんか?

 薬はしばしば口に苦い。だから飲みやすくするために糖衣で加工する。「本当のこと」は耳に痛い。都合が悪い。だから受け取りやすいように、本書では「悪ふざけ」や「下ネタ」で加工されている。甘いけれど、それは薬だ。ふざけているけれど、それは「本当のこと」だ。瞳が曇ってくると、私は本書を読み返したくなる。王様の耳はロバの耳だってことを、ときどき再確認するために。

(前略)健康診断は嫌なものです。採血したりバリウムを飲んだり、そんなことを好き好んでやる人などいません。

 それでもなぜ、健康診断をうけなくてはならないか。それは「大切な人のために」なのです。

正しい保健体育 (よりみちパン!セ)

正しい保健体育 (よりみちパン!セ)