何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

11冊目 銀河英雄伝説9〜回天篇

田中芳樹 著『銀河英雄伝説9〜回天篇』読了

本巻の主要トピック

・ヨブ・トリューニヒト、新領土総督府高等参事官就任

・ラインハルトの求婚

・ウルヴァシー事件 〜ロイエンタール元帥叛逆事件(新領土動乱)

・第二次ランテマリオ星域会戦(双璧の争覇戦)

 銀英伝は、ラインハルトとヤンの2人を主人公に据えた物語だ。通常、物語には主人公がいて、その正反対の性質をもつ副主人公(ライバル)がいる。ラインハルトとヤンの関係も、確かに相対しているようにみえる。だが、例えるならば、ラインハルトは太陽(近づけば焼き尽くされる)、ヤンは暖炉の炎。どちらも「陽」に属す。ラインハルトに対する「陰」は、ロイエンタールが担っている。私はそのように読んでみた。「銀英伝」の中で、誰が好き?と問われれば、私は、さんざん悩んだ挙句、ヤン・ウェンリーと答えるだろう。では、誰が一番魅力的?と問われれば、梟雄オスカー・フォン・ロイエンタールと即答できる。左右の瞳の色が異なる「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)」という、わかりやすい身体属性に象徴されるように、複雑な内面をもっていることが、その理由だ。おそらく著者も、お気に入りのキャラのひとりだったのではないか。というのも、 ここまで、多くの英雄たちが登場し、また去っていった。本巻において、ロイエンタールもまた去りゆくのだが、その去り際を、多くの紙面を割いて描いてるからだ。

  ロイエンタールという複雑な個性の最期も、単純なものではありえない。ロイエンタールの美学が存分に味わえる本巻もまた、大傑作でした。男泣き必至!

「わたしは、たしかにあなたを失いました。でも、最初からあなたがいなかったことに比べたら、わたしはずっと幸福です。あなたは何百万人もの人を殺したかもしれないけど、すくなくともわたしだけは幸福にしてくださったのよ」(フレデリカ) 

「ことばで伝わらないものが、たしかにある。だけど、それはことばを使いつくした人だけが言えることだ」

「だから、ことばというやつは、心という海に浮かんだ氷山みたいなものじゃないかな。海面から出ている部分はわずかだけど、それによって、海面下に存在する大きなものを知覚したり感じとったりすることができる」

「ことばをだいじに使いなさい、ユリアン。そうすれば、ただ沈黙しているより、多くのことをより正確に伝えられるのだからね……」(ヤン) 

「 あなた、ウォルフ、わたしはロイエンタール元帥を敬愛しています。それは、あの方があなたの親友でいらっしゃるから。でも、あの方があなたの敵におなりなら、わたしは無条件で、あの方を憎むことができます」(エヴァンゼリン)

「古代の、えらそうな奴がえらそうに言ったことがある。死ぬにあたって、幼い子供を託しえるような友人を持つことがかなえば、人生最上の幸福だ、と……ウォルフガング・ミッターマイヤーに会って、その子の将来を頼むがいい(後略)」(ロイエンタール) 

銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈9〉回天篇 (創元SF文庫)