何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

6冊目 銀河英雄伝説5〜風雲篇

田中芳樹著『銀河英雄伝説6〜風雲篇』読了

本巻の主要トピック

・ランテマリオ星域会戦

・バーミリオン星域会戦(ヤンの求婚)

・バーラトの和約

・ローエングラム王朝の樹立

 戦記物としての本書は、この巻で最大の山場を迎える。約2世紀に亘って続いた、銀河帝国自由惑星同盟の争いに終止符が打たれる。 最後の決戦に際して、登場人物たちが、自らの思想信条を語るシーンが印象的な巻。

 戦いは同盟側の敗北によって終わる。でも、物語はまだまだ半ば。次巻以降も読者に人心地つかせる間もなく、物語はますます加速してゆく。

「わしに誇りがあるとすれば、民主共和政において軍人であったということだ。わしは、帝国の非民主的な政治体制に対抗するという口実で、同盟の体制が非民主化することを容認する気はない。同盟は独裁国となって存続するより、民主国家として滅びるべきだろう(中略)わしはかなり過激なことを言っておるようだな。だが、実際、建国の理念と市民の生命とがまもられないなら、国家それじたいに生存すべき理由などはありはせんのだよ。で、わしとしては、建国の理念、つまり民主政治と、市民の生命をまもるために戦おうと思っておるのさ」(ビュコック) 

  「ヤン提督にはなによりもまず政治的野心がない。政治の才能もないかもしれない。だが、ヨブ・トリューニヒトのように国家を私物化し、政治をアクセサリーにし、自分に期待した市民を裏切るようなまねは、ヤン提督にはできんだろう。ヤン提督の能力は、歴史上の大政治家たちに比較すれば、とるにたりないものかもしれんが、この際、比較の対象はヨブ・トリューニヒトひとりでいいんだ」

「そう思います。ぼくもそう思います。でも、トリューニヒト議長は市民多数の意思で元首にえらばれたんです。それが錯覚であったとしても。その錯覚を是正するのは、どんなに時間がかかっても、市民自身でなくてはいけないんです。職業軍人が武力によって市民の誤りを正そうとしてはいけないんです」(シェーンコップ&ユリアン) 

「(前略)では、専制政治も同じことではないのか。ときに暴君が出現するからといって、強力な指導性をもつ政治の功を否定することはできまい」

「私にはできます」

「どのようにだ?」

「人民を害する権利は、人民自身にしかないからです。言いかえますと、ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム、またそれよりはるかに小者ながらヨブ・トリューニヒトなどを政権につけたのは、たしかに人民自身の責任です。他人を責めようがありません。まさに肝腎なのはその点であって、専制政治の罪とは、人民が政治の害悪を他人のせいにできるという点につきるのです。その罪の大きさにくらべれば、一〇〇人の名君の善政もの功も小さなものです。」(ラインハルト&ヤン)

銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈5〉風雲篇 (創元SF文庫)