何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

4冊目 銀河英雄伝説4〜策謀篇

銀河英雄伝説4〜策謀篇』 田中芳樹 著、読了

本巻の主要トピック

銀河帝国正統政府樹立(エルウィン・ヨーゼフⅡの亡命)

・「神々の黄昏」作戦発動(イゼルローン攻防戦〜フェザーン占領) 

  原作を読んでいて、気になったシーンがあると、アニメ版ではどう描かれていたのか、ときどき比較しながら読み進めるのが、ひとつの楽しみになってきた。それで気づいたのだが、「銀英伝」にどハマりする原因となったシーン、それが実はアニメオリジナルだったらしい。

 そのシーンとは、ヤンが人間と他の生物との違いについて語るシーンだ。本巻ではなく、第3巻に収められているので、前回のブログで取り上げるべきだったが、失念していた。

 それまで私が知っている「人間の定義」では、“言葉を持つ”とか“道具を使う”とかいったものが代表的だった。他には、“遊ぶ”とか“笑う”などがあった。確かに、それらは人間に特徴的なものかもしれない。だが、そういったものの原始的な萌芽は、すでに他の生物にもみられるだろう。イルカやシャチなどは、鳴き声によるコミュニケーションで、かなり高度な集団行動を行うし、ある種のトリやサルは、道具を駆使して、エサを獲得したりする。そう考えると、ヒトと動物を線引する定義としては、いささか切れ味に欠ける気がしないでもない。そんな思いを、長年抱えていたのだが、件のシーンによって、そのモヤモヤが解消した。

 アニメ版 本編 35話より

生物は子孫に遺伝子を伝えることでしか、ながい時の流れの中で己の存在を主張することはできない。だが人間だけが歴史をもっている。歴史をもつことが人類を他の生物とちがう存在にしているんだ。だから私は歴史家になりたかったんだ(ヤン) 

  確かに、人間以外の生物で歴史をもっている生物は見当たらない。歴史らしきものをもっている生物も、すぐには思い浮かばない。この定義は、なかなかいい気がする。しっくりくる。しかし、それは私がものを知らなさ過ぎるだけで、歴史あるいは歴史らしきものをもつ生物が、すでにいるのかもしれない。それはそれとして、具体的な反証に出会うまでは、私の中では、「歴史をもつ生物」というのが、暫定的な「人間の定義」としておきたい。

アニメには、時間的制約があるため、原作そのままを再現できるわけではないから、このシーンの、この台詞が、別の巻で登場するかもしれない。でも、今のところ、アニメにしか登場していないことから考えると、「銀英伝」は、原作もアニメもそれぞれに味わわなければ、味わい尽くすことができないということだ。それはすなわち、二度楽しめるということでわないか!!!(マンガ版もあり、しかも複数の漫画家によって描かれているので、それらを含めれば、三度、四度と楽しめます!!!!)

 「独裁者という名のカクテルをつくるには、たくさんのエッセンスが必要でね。独善的でもいいからゆるぎない信念と使命感、自己の正義を最大限に表現する能力、敵対者を自己の敵ではなく正義の敵とみなす主観の強さ、そういったものだが…(以下略)」(ホワン) 

「どれほど非現実的な人間でも、本気で不老不死を信じたりはしないのに、こと国家となると、永遠にして不滅のものだと思いこんでいる“あほう”な奴らがけっこう多いのは不思議なことだとは思わないか」(ヤン)

 軍事が政治の不毛をおぎなうことはできない。それは歴史上の事実であり、政治の水準において劣悪な国家が最終的な軍事的成功をおさめた例はない。強大な征服者は、その前にかならず有為の政治家だった。政治は軍事上の失敗をつぐなうことができる。だが、その逆は真でありえない。軍事とは政治の一部分、しかももっとも獰猛でもっとも非文明的でもっとも拙劣な一部分でしかないのだ。その事実を認めず、軍事力を万能の霊薬のように思いこむのは、無能な政治家と、傲慢な軍人と、彼らの精神的奴隷となった人々だけなのである。

銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)

銀河英雄伝説〈4〉策謀篇 (創元SF文庫)