何冊よめるかな?

本棚の肥やしと化した本たちを供養するため始めたブログ

19冊目 憂鬱と官能を教えた学校(上)

『憂鬱と官能を教えた学校(上)』 菊地成孔 大谷能生 著、読了。

 

私が尊敬する数少ない人物の一人が著者(菊地)である。私はまた、音楽にも関心がある。そんなところから本書を手に取った。手に取ったのは今回で2回目だ。

本書は、「バークリーメソッド」を中心に据えて、音楽史を俯瞰しようとするもの。音楽の歴史は、音楽の記号化、論理化という視角から眺めることができる。そうしたときに、「十二音階平均律→バークリーメソッド→MIDI」という3つのピークポイントが設定できる。という。

それは「音楽の科学化」ということができるように、私には思われた。科学とは公共性をもった知的営みだ。門外不出の、特殊な才能集団だけが行っていた音楽という営みを、記号化、論理化することで、(学ぶ気があれば)誰にでも理解できる公共的なものにしたと読んだ。

本書は音楽史よりも音楽理論に比重が置かれていて、第6講あたりから、実学(音楽理論)の話が多くなってくると、ちょっと文章だけではついていけない感があり、上巻だけで読み終えることにするが、軽妙洒脱かつ鋭い著者らの語りは、読んでいて心地よい。私は書き込みをしながら読書をするのだが、書き込みで真っ赤になる本ほどいい本だと思う。本書は読み返すのが困難なくらい書き込みでいっぱいになった。

いつか鍵盤を片手に、実学部分にもじっくり取り組みたいと思う。